
AIは私たちの味方?
2025/01/17
みなさま、こんにちは✨✨
新しい年が始まり、少し落ち着かれた頃でしょうか?
2025年最初のコラムはMuSuBi CLUB編集長 きなこがお届けします。
年が変わる前の12月、ノーベル賞授賞式の映像をご覧になった方も多いかもしれません。 日本の私たちにとっても、いろいろな思いで歴史的瞬間を見つめる機会になったと思います。
平和賞が話題になったのはもちろんですが、今回、AI分野の研究もノーベル賞の栄誉に輝きました。
たんぱく質の構造を予測するAI開発に「化学賞」が、ヒトの神経の働きを模したネットワーク応用のAI研究に「物理学賞」がそれぞれ授与されています。後者はおなじみのChatGPTにも結びついた機械学習に関する研究です。
さらに、その後たまたま見かけたTV番組では「AIキャスター」が登場。ナチュラルに話す姿にAIの飛躍的な進化を感じた年末でした。
「自然に見えるか」「自然に聞こえるか」が、AIの作ったものを判断する一つの指標になると思います。「リアルっぽい自然さ」と「本物」の間にはまだズレがあったりもしますが、たった数年前と比べても格段の差があるように誰もが感じているのではないでしょうか。
実は、2024年最も多くの方に読んでいただいたMuSuBi CLUBの記事が「子育て世代が気になる! AIのこと」。
AIがますます身近になっている今日この頃。
SNSを少しのぞくと…
「わ!スゴ!奇跡みたい!
こんなことあるの!?」
びっくりな動画に遭遇。実はAIが生成したものだったなんてことも増えていますよね。
AIはもう実際に、クリエイティブの現場でたくさん使われています。私たちがごく日常で触れるものにも様々な形でAIが貢献しています。
そこで今回は、クリエイティブ分野で活用されるAIのお話を中心にまとめます。
クリエイティブに使われるAI
まずは映画の制作現場を見てみましょう。
2023年アカデミー賞受賞の作品では、不必要に写り込んだものを消したり、時間のかかる画像作成を補助するツールとしてAIが積極的に使われたそう。
一方で、ハリウッド映画の制作では、エキストラの数がとても多く、関連する職種も日本とは比べ物にならないほど多種多様。ここにAIが導入されればどうなるでしょう。 俳優がデータ化され画像生成が普及し、エキストラ出演者が減るということは、彼らの仕事が奪われることを意味します。俳優組合によるストライキの争点にもなっています。
これに対し、日本の撮影現場では無償エキストラが多く、待機時間が長いなど負担も大きいので、AIを導入することで効率化が見込めたり、安全性が上がるなどのメリットのほうが注目されているようです。
アニメーション映画を制作し、国際映画祭でも入選している中島良監督によれば、 「AIを相棒のように感じている」。
脚本の制作やキャラクターのデザインは人間の手によって生み出しつつ、動画の仕上げ段階は画像生成AIソフトを使って、人物の影をリアルに加工したり、表情をより細やかにしたり、クオリティを高める作業にはAIが大いに貢献したそう。
とくに、多くの人手と手間がかかる映画制作では、クオリティーを妥協せず、諦めていた表現を可能にするツールになり得るのだと中島監督は考えます。
「AIとの対話の中からより良い発想が生まれ、対話によってまたAIの精度が高まっていくことで、共に成長しながら人間の可能性を伸ばしていけると考えている」
(毎日新聞オピニオン欄2024.9.4より) 
これに対し、「AIは使わない」と言い切るのがフランスの作曲家フィリップ・マヌリ氏。
クリエイション(創作)とAIは別のものだという立場に基づきます。
「AIはすでに存在するものを模倣するための道具、作曲家は音楽を生み出していく側の人間」
しかし、AIには作曲ができる、という考えが社会に広まってしまうのも無理もないとも語ります。例えば、AIにある年代の○○のような音楽を作れと指示するだけで、ほぼ完璧に当時のような曲ができあがります。
マヌリ氏は「AIの進化を無いことにはできない、向き合わなければならないこともある」としながらも、「自らの耳で感じ取ってどう考えるか」「脳が識別したものを、内的なものとしてまた新たなものを生み出していく」のが作曲だと主張しています。
(毎日新聞オピニオン欄2024.9.4より)
2人のクリエイターの意見は、AIの進化によってクリエーションの可能性が広がることもあると同時に、人間にしかできない仕事の存在やAIの限界についても示してくれます。
AIを使うのか、使わないか。
真逆のスタンスが出てくるのも、それだけAIが現場にさまざまな影響をもたらし、無視できない存在になっていることの証かもしれません。
アニメや映画、音楽を楽しむ側としても、単純に「良し悪し」だけで片付けることはできないと感じます。素敵な作品やアートの表現を高めたり可能性を広げるためのツールとして使われるAI技術の話を聞けば、頼もしいと感じ、期待も広がります。でもその背景には課題もたくさんあることを心に止めておきたいです。
さらに、国内外のマスメディアもAIの導入については過渡期。日本ではある新聞社※で試験的にAIに新聞を作らせる企画が行われたり、どのようにAIを活用していくか検証が行われていて、まさに変化の真っ只中にあります。
※佐賀新聞社 2024年夏
例えば記事の作成を丸投げすることで著作権侵害につながりやすいなど、深い問題があるのも事実。
ここでもやはり、使いこなす人間のリテラシー(=知識や判断力)に責任がかかっていきます。
さまざまな課題を残しながら、環境の変化は止められそうにありません。その中で正しく状況を理解するこことや、「AIとの対話」がますます重要な鍵になりそうです。
【生成AI】
生成AIは新しいコンテンツを生成できるという点が、従来のAIと大きく異なる。
従来のAIが学習済みのデータの中から適切な回答を探すのに対し、AI自身が自ら学習し続け人間が与えていない情報もインプットし、新たにアウトプットできるのが生成AIの定義。
新たな生成AIが次々と生まれ、その進化は加速している。新しいコードの作成やマーケティング資料の作成、大量のデータの分類といった多様なタスクに活用され、さまざまな業種で導入されている。
終わりに
AIとともに生きる時代の中、子どもたちは成長し大人になっていきます。
今後ますます、私たちがふれる情報はAIと切り離せないものに展開していくでしょう。
たとえ仕事などで直接関わっていかないとしても、AIとは何者なのか、どんな影響を私たちに与える存在なのか理解しておくことは大切だと実感します。
ーAIが私たちの味方になるかどうかー
この答えを導き出すのも私たち自身。
今後どれだけ進化し、社会的にどんなルールが必要になっていくのか、私たちの生活にどのように入り込んでくるのか。 明確な見通しが立っていないからこそ、親世代も一緒にその変化を見つめていかなければならないと感じます。
MuSuBi MAGAZINEでは引き続き、子育て×インターネットを大きなテーマとして新鮮な情報をお届けしていければと考えています。
★ 最後までお読みいただきありがとうございました ★