がんばらなくていい 読み聞かせ

がんばらなくていい 読み聞かせ

2025/05/09

こんにちは。MuSuBi CLUB編集部のきなこです。

今月のテーマは「絵本」

 

夏のような陽気の続いた4月の終わりに、

司書のSさんにお話を伺いに行きました✨

ママとして大先輩でもあるSさんは、関西で学校司書のお仕事を10年間続けていらっしゃいます。

「子どもたちが本を選んだり、ページをめくる姿を見ていると心があたたかくなります。」

大好きな本にいつも触れられるお仕事や、ご自身の育児経験から感じることなど、たくさんお話をお聞きしました!

contents

がんばらなくていいです

本は万能じゃない

でもやっぱり、絵本は素敵なもの

ママの読み聞かせ

終わりに

 


がんばらなくていいです

忙しいけど、読み聞かせだけは何とかがんばってるよ!

知り合いのママさんとの会話の中で出てきたひと言です。

自分もそう、という方もおられるのではないでしょうか。

 

私自身も子どもの興味のありそうな本を見つけては、「寝るまでに読んであげたい!」と 意識してがんばっていたほうかなと振り返ります。

読み聞かせはしなくちゃいけないもの、という前提で話が進んでいるようなところもありますよね。 

 

S:「日本のお母さんたちは本当に熱心だと感じます。子どもに愛情をいっぱい注いでいますよね。既にみなさん、充分頑張ってます!

本の読み聞かせ?

そうですね、読まなくても、いいんですよ。読んでもらわなくても、子どもはしあわせになれると私は思います。例えば、読み聞かせをしていなくて、その子が本をあまり読まない人に成長したとしても、それはお母さんのせいではないと考えます。

読む人は読むし、読まない人は読まない。自分の両親や姉弟を見てもそうです(笑)

学力や情操教育に影響が…と見聞きすれば、お母さんたちは当然気になると思いますが…個人的にはあまり関係ないと思っているんですよね。」

 

目からウロコです!

 

「1年間でたとえ10冊でも、一緒に読めたならそれはすごいこと。 絵本の時間は、その子との時間なんです。

読み聞かせても読み聞かせなくてもいいし、 お母さんが読みたい本があればそれを自分で読めばいいと私は思っているんです。

私は私、好きな本を読むわね、というスタンスでいても、やがて子ども自身が興味を持てば「自分で読む!」ってなったりします。そうなったら本人に任せちゃえばいいと思います。

ただ、一つだけ言えるのは、そこに本がなければ読むこともないということ。図書館の本でも、お下がりの絵本でもなんでもいい。環境を整えるというのは大事だと思います」

 

なるほど!

それが絵本でも絵本じゃなくても、子どもと過ごす時間や経験だということには変わりないということ。

「読みきかせ」について、なんだか肩に力が入りすぎていたかもしれません。

 

 


本は万能じゃない

-本好きの子になってほしい。 そう思って読み聞かせをがんばっているママもいると思います。

S:「本によって良い影響を得ることもあれば、悲しいけれどネガティブに影響する書物だって存在します。

すごく極端な話にはなってしまうのですが、本の力によって同じ方向に思想が誘導されるようなことも…これまでの歴史を見てもありますよね。」

-本は決して万能なわけじゃない…。

S:「そう。でも、たくさんの本に触れることで本質を見極める力がつくということはあると思います。本物のことが書いてあるかどうか、嘘がないかどうか見抜く力は、本を読む経験によって身につくもの。つまり、読むならたくさん読むしかない、ということにはなりますけどね…!」

デジタルネイティブ世代の子どもたち。その情報量も入り方も私たちが子どもだった頃とは全く違います。インプットの仕方、アウトプットの仕方もどんどん変わっていき、本離れも進んでいると言われています。

状況が目まぐるしく変わる時代だからこそ、長い目で見ていきたいですね。

 

 


でもやっぱり、絵本は素敵なもの

S:「小学校の図書の時間に読み聞かせをすることがあります。

先日も新一年生に 、絵本を読むよ〜と声をかけると、キラキラと目を輝かせて集まってきてくれて。皆静かに座って集中して聴いてくれました。

子どもたちを通して感じるのは、親御さんが愛情を注ぎ大切に育てられているということ。これをひしひしと実感します」

-幼稚園や保育園で読み聞かせをたくさんしてもらっているのもあるかもしれませんよね。

S:「もちろん絵本に触れたり、読んでもらった経験というのもベースにあると思いますが、それだけではないはずです。

繰り返しになりますが、日本のお母さんたち、めちゃくちゃがんばってると私は思うんです。

出版業界の売上が下がり続け、書店がどんどん少なくなっている時代でも、日本の絵本市場は拡大しているのはご存じですか?

それは、親御さんが絵本は買ってあげようと思っていることの表れ。子どものためならと考えてくださっているからだと思います。

それに今、日本の絵本が海外でも非常に高い評価を得ています。 多くの絵本が翻訳されてさまざまな国で読まれているんです」

※参考:https://toyokeizai.net/articles/-/674644?display=b


 

📕「パンどろぼう」(KADOKAWA)

引用:KADOKAWAさん@本の情報 公式Xより

『パンどろぼう』、ご存じですか? シリーズで何冊も出版され、書店の絵本コーナーでも特集されたりと大人気の作品ですが、1作目が出版されたのは2020年。

Sさんが最初に手に取ってこのお話を読んだ時、正直そこまで強くは惹かれなかったものの、実際に子どもたちに読み聞かせると、嬉しい誤算があったのだそう…!

S: 「ページをめくって物語が進んでいくごとに子どもたちが生き生きと反応してくれる。あるページでは全員が同じ表情にパッと変わって…!絵本の力を感じました。

子どもの反応も込みで成り立つ絵本もあるんだと新鮮な発見でした!」

 

-「成人式を終えた絵本(出版から20年以上)がいい」とか「50年以上読まれている絵本は名作絵本」など聞くことがあります。

S:「そうですね、この本もそういう本になるんじゃないかなと思っています」

 

📕「もこ もこもこ」(文研出版)

引用: 文研出版instagramより

Sさんご自身の子育ての中でも絵本にまつわる印象的なできごとが。

まだ赤ちゃんだった娘さんに、この「もこ もこもこ」の絵本を見せた時、ページをめくってパッと色が変わるたびに大きく反応が!

「この子感動してるんだ!」と、手に取るように感情が伝わってきたんだそう。

その経験が、赤ちゃんや子ども向けの絵本にも関心が向いていく大きなきっかけに。

 

S:「この本じゃなくてもいいです。でも赤ちゃんに選ぶなら、色合いがはっきりしたものをお勧めします」

絵本の時間は、お母さんやお父さんが絵本をとおして語りかける時間。きれいな色の世界や、言葉のリズム… 文字が読めなくても、赤ちゃんは絵本の楽しさを味わえるんですよね。

 

 


ママの読み聞かせ

S:「学校や園、集団での読み聞かせでは、読む人がお話から脱線するのは避けたいです。 あくまでも本が主役であり、読み手は黒子に徹するのがいいと考えます。

良い意味で淡々と読むことを心がけているんです。

そして、読み終わった後は「面白かったね」など感想の押し付けになるような言葉も発しません。

後になって細かなストーリーを覚えていなくてもいいから、「あっ!この本なんか知ってる」という感覚を子どもたちの中に残せたら素敵だと思っています。

でも、お家では、絵本の時間はママとお子さんだけの時間脱線もアリです!そこには親子の関係性があるので、お話しながらでも、楽しんで読めばいいと思いますよ!」

 

いくつか質問にも答えていただきました。

Q.書店の棚には赤ちゃん絵本もいーっぱい!幼児絵本もよく似たテーマのものがたくさん。 選ぶのに迷ってしまったら…?

A. 図書館の司書さんに聞いてみる、本屋さんで聞いてみる。本のプロに聞くのがいちばんです。うちの子はこんな子で…と少しお話すれば「それならこれがおすすめ!」とその場で何冊か紹介くださると思います。

 

Q. 時間を作っていざ読み聞かせ。ところが子どもがどんどんページをめくっちゃって読めない。ちゃんと読んで聞かせたいのに…

A. それほど興味があるってことですよね!しかもページがめくれるようになったんです。指を器用に動かして、一枚一枚ページをめくるって、前はできなかったはずですよね。それって凄いこと。 お子さんは、その動作を楽しんでいます。

 

Q.デジタルネイティブ、動画に夢中な子どもたち。昔の子どもたちに比べて、絵本や物語に集中できないといった変化は感じますか?

A. 今の子どもたちが集中できてないとは思わないです。もちろん、デジタルに身近に触れて、昔とは環境が変わっていると思いますが、根本では変わっていないのでは。読み聞かせが始まれば集まってきてくれて本の世界にぐっと入ってきてくれるなと感じています。

 

 


終わりに

実はこのインタビューに伺う前、読み聞かせについてリサーチしていると「寝る前に読むのがいい?」「寝る前は読まない方がいい?」 、真っ二つに意見が分かれてるのを見聞きした私。「う〜ん、どうなんだろう」と思ったりしたのですが・・・

それはどちらでも良さそうですね😆

 

どっと疲れを感じる時間帯、寝落ちとの闘い。

「ラクになる」時期なんて当分来ないよ…

 

そんな時は読まなくてもいいんですよね。

これは読みたい!というものがあれば、自分とお子さんとのタイミングで。

 

そして、

子育てをしている人にとって世間からのプレッシャーが強い時代だというお話にもなったのですが…

Sさんからのメッセージは「気楽に行きましょう!」

日々子どもたちと接し、その背後にいるお母さんたちの「応援団」でもあり、子育てを経験された先輩ママとしても心強いエールをいただけました。

 

★今回も最後までお読みいただきありがとうございました★