
コットンプロジェクト16年の足あと
2025/08/22
皆さま、こんにちは。MuSuBi CLUB編集部のきなこです。
先月から2回に渡りインドの言語や文化、映画、小説についてご紹介してきましたが…今回は特別編。
MuSuBi cottonの生産地であるインドのオリッサ州で実際にコットン栽培に携わっている生産者さんから直接お話を伺う機会があったので、その模様をお届けしたいと思います。
インドのコットン生産者さんにオンラインインタビュー!
今回お話を伺ったのは、70歳の男性、ジャグジバンさん。お孫さん2人を含む7人家族。ベテランのコットン農家さんで、地元の農家組合のリーダーも務めておられます。
インド・オリッサ州と日本の時差は3時間半。今回はPBPコットンプロジェクト※の運営に長年携わるMさんと一緒にオンラインでインタビューを遂行!
Mさんが英語で質問し、チェトナのスタッフであるAさんが現地語に訳してジャグジバンさんにお話を聞き、その場でまた英語に訳してもらって、私たちに伝えてくれるという流れです。通信環境が軒並み不安定だったり、言葉の壁ももちろんありましたが、終始和やかな雰囲気でインタビューが進みました。
スマホで屋外でインタビューを受けてくださる背後を、住民の方々が通り過ぎていく様子が見えたりして、遠く離れたインドの農村とリアルでつながっている感覚に。
オリッサ州の穏やかな空気も伝わってきます。Mさんは以前現地を視察したことがあるのですが、私にとってはまったく見知らぬ土地。画面越しの光景もとても新鮮でした!
インタビューの冒頭、ジャグジバンさんが子どもだった頃と今の環境を比べて、大きな違いは何か尋ねたところ、「医療」や「病院」というワードが何度も出てきたのがとても印象的でした。
【子育てで大変だったこと】
ジャグジバンさんが子育てをしていた当時は、子どもが病気になったりケガをしても、大きな病院にかかることは非常に難しかったそう。情報がなく、どこに良い病院があるのかもわからなければ、自転車やバイクなどの乗り物もないので遠くの医療施設に行くこともできませんでした。また、収入が少なかったため、子どもたちに十分な教育を受けさせることもできなかったのです。そんな背景が、後ほどの「時代の変化」のお話にもつながっていきます。
【子育ての喜び】
たくさんの苦労を経験しながらも、ジャグジバンさんは子育ての喜びを笑顔で語ってくれました。「離れて暮らす息子たちが休暇で帰ってきて、みんなで一緒に食卓を囲む時間が一番幸せだ」と話すジャグジバンさん。 ”今がしあわせ”というお話が真っ先に出てきて、こちらも嬉しかったです。
「大人になった息子たちは農業に関する新しい知識などを身につけて、伝統的な方法も用いながら仕事の面でも支えてくれて頼もしい」
時代は変わっても、生活や生きることの中心にコットン栽培があります。
いまを生きる子どもたち
世代間の変化についてお聞きする中で、ジャグジバンさんは、「自分たちが持てなかった新しいスキルを、彼らは身につけることができる」と話します。
医療や教育環境の充実に伴って、デジタル、テクノロジー、英語など、多様なスキルを学ぶ機会が増え、子どもたちの可能性が広がっていることを語ってくださいました。教育機会が増えたことで確実に、子どもたちの将来の可能性がぐんと広がっているんですね。
現地の若い世代が、今どんなことに夢中になっているのか聞いてみました。
【夢中になっていること】
息子さん:農業の仕事が好きで一生懸命取り組んでいます。その一方で、スマホに夢中で、アニメも大好き。
お孫さん:テレビでアニメを見たり、ゲームをすること。英語の勉強など。
スマホを持つ若者が増え、FacebookやinstagramなどSNSもどんどん普及しているそう。
時代や国境を超えて、共通していますよね!
ジャグジバンさんのお話から、スマートフォンやインターネットの登場が、世代を取り巻く環境に画期的に、大きな変化をもたらしたことがわかりました。子どもたちや若者がSNSやゲームに夢中になる様子も含めて…日本に起こった変化と似ています。
今の日本の親世代や祖父母世代が感じてきたことと同じかもしれない、とはっと気づかされました。
文化も習慣も状況も「全然ちがう国」だと思ってインドのことを調べてきましたが、根底はおなじものが流れているんだなあと。そして、子育ての大変さや喜び、その根底にある親たちの思いも、私たちと“おなじ”なんだだと感じます。
一方で、もちろん安直に「同じ」とばかり片付けることはできません。
インドには、SCST(指定カースト指定部族)という社会制度の縛りが強く残り、就ける職業は基本的に「農家」など定められている背景もあります。また、男女格差の問題も依然として存在します。こうした現実から目を背けてはいけないことも改めて感じます。
インタビューの最後には、ジャグジバンさんはじめ、現地の方々やスタッフの方々が、PBP※への感謝を伝えてくださいました。(昔よりも豊かになっているとはいえ)「こうしたサポートはありがたく、ずっと続いてほしい」という切実な思いが、私たちの心に深く響きました。
※PBP(ピースバイピース)コットンプロジェクトは16年に渡り、インドの農家の有機栽培への転換支援、現地の子どもたちの就学復学支援等を進めています。
終わりに
今回のインタビューは、遠く離れたインドの農村と私たちの間に、確かなつながりを感じさせてくれる貴重な時間になりました。
この活動が、今後も続いていくよう、私たちも精一杯取り組んでいきたいと思います。
【information】
MuSuBi cottonは今秋、繊維の展示会に参加を予定しています。
>> 糸_の祭典(いとへんのさいてん) instagram公式アカウント
展示を通じて、MuSuBi cottonが参画しているオーガニックコットンの支援プロジェクトを広く知っていただき、理解を深めていただく機会になればと考え準備が進んでいます!インスタ上にも出展者からのワクワクする投稿が続々…ぜひご覧ください!